⑻日本に帰化したい

日本に在留される外国人の方の目指されるビザのゴールは2種類です。一つは日本国籍を取得する【帰化】、もう一つが、国籍は変えず【永住者】ビザを取得するという方法です。

どちらも、半永久的に日本に在留する権利を得られますので、失職や離婚のたびに「ビザが無くなって帰国しなければならないかもしれない」という不安を感じることがなくなり、また信用力が高まり、住宅ローン等のローン契約もしやすくなるという大きなメリットがあります。

違いとしては国籍を変えるか変えないかという点ですので、申請者様のお考えで選択されればよいと思います。この章では【帰化許可】についてご説明します。

<条件>

以下1~7まで全ての条件を満たす必要があります。

1、引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所要件)。

2、20歳以上で、かつ本国の法律上行為能力を有すること(能力要件)。

3、素行が善良であること(素行要件)

4、本人、又は本人と同一生計の配偶者等の親族が、日本で独立して生活していける資産又は、技能を有すること(独立生計要件)。

5、帰化により日本の国籍を取得した場合、元の本国の国籍を失うべきこと。又は元々無国籍であること(重国籍防止要件)。

6、日本国憲法や日本政府を、暴力で破壊することを企てたり、主張したり、そのような団体に加入したりしていないこと(憲法遵守要件)。

7、小学校4年生程度の日本語の読み書きや会話が出来ること(日本語能力要件)。

 

以上が国籍法第5条に定められていたり、我々専門家が得た実務上必要と思われる帰化許可の条件です。帰化は外国人関係の法律の中で最もブラックボックスになっている部分です。非常におおまかに表現されていますので、以下で少し具体的に説明します。

 

 


1、引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所要件)。

【引き続き5年】が条件ですので、3年継続して在留し、一度帰国し、またビザを取って入国して2年在留した場合は【引き続き5年在留】と認められず、この条件に該当していないことになります。

 

 

2、20歳以上で、かつ本国の法律上行為能力を有すること(能力要件)。

【行為能力】とは、単独で有効な法律行為を行える能力のことです。未成年の間は原則、この行為能力はありません。ただし日本では成年擬制という制度があり、法律上結婚すれば未成年でも成年者として扱われます。知的障がいなどの場合は成年年齢に達しても単独で法律行為が出来ないケースもあります。

また日本では20歳で成年年齢に達しますが、本国、例えばインドネシア国籍の方でしたらインドネシアの国内法でも行為能力を認められる年齢である必要があります。ちなみにインドネシアは21歳が成年年齢となるようです。

 

 

3、素行が善良であること(素行要件)

以下の⑴⑵⑶のいづれにも該当しないこと。

(1)日本国の法令に違反して、懲役、禁錮、罰金刑に処せられたことがある者。

ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者、又は執行猶予の言渡しを受けた場合で執行猶予の言渡しを取り消されることなく執行猶予期間を経過し、その後更に5年を経過したときは、これに該当しないものとして取り扱う。

※【刑の消滅の規定の適用を受ける者】とは、

(a)懲役、禁錮刑の場合は、刑の執行が終わり、又は失効の免除を得た者が、その後罰金以上の刑に処せられないで10年を経過したとき

(b)罰金刑の場合は、刑の執行が終わり、又は失効の免除を得た者が、その後罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき

(c)刑の免除の言渡しをうけた場合、その言渡しが確定した後、罰金以上の刑に処せられないで2年を経過したとき

 

(2)少年法による保護処分が継続中の者。

 

(3)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特別の事情がある者。

(4)税金逃れなど不当なことをしている者。

上記(1)~(3)までと毛並みが違うことですが、例えば住民税を軽減させるため、子供以外の国内外の親族を3人も4人も扶養者に入れている場合は、「本当にその親族の生活援助をしているか?」という観点でも審査されます。扶養者を増やすと住民税が減額されますから、本当は援助していないのに扶養者に入れている場合、不当に税金逃れをしている、と判断されるわけです。その為、このような場合は、申請へ援助金を渡した証明(送金票や送金記録)の提出を要求されます。
節税は大事ですが、一つ間違えれば違法行為になりますので、帰化や永住を目指す外国籍の方は止めておかれた方がよいでしょう。

 

 

4、本人、又は本人と同一生計の配偶者等の親族が、日本で独立して生活していける資産又は、技能を有すること(独立生計要件)。

 

独立生計要件は、必ずしも申請人自身が全て具備している必要はなく、配偶者等を含めた世帯単位でみて安定的な生活を送れる資産や技能があればよいとされています。

当職が帰化許可手続きを行ったケースでは、

現有在留資格【特別永住者】・世帯年収400万円・夫婦共働き子供無しの世帯のケースで○帰化許可が下りています。

 

帰化許可の具体的な基準を法務省は公表していませんので、参考までに永住者ビザの例を記載します。

◎例1:現有在留資格【技術・人文知識・国際業務】・年収290万円・独身

⇒○永住許可

 

◎例2:現有在留資格【技術・人文知識・国際業務】・年収340万円・4人家族(本人・妻・小学生の子供2人)

⇒×永住不許可

 

◎例3:現有在留資格【技能】年収310万円・6人家族(本人・妻・成人の子供1人・中学生の子供3人(内1人は本国に在住))

⇒×永住不許可

永住者ビザでは、最近、扶養家族イコール負担が増えると考えているようです。帰化と永住者ビザは違うものですが、帰化は日本国籍や選挙権まで与える非常に重い処分であるので少なくとも永住者ビザの条件と同等か、それ以上を求められると考えられます。

そう考えると、独身の場合は少なくとも年収300万円以上、4人家族でしたら最低400万円以上はあったほうがよいかと思われます。

 

 

7、小学校4年生程度の日本語の読み書きや会話が出来ること(日本語能力要件)。

まず帰化許可申請書には、帰化の動機書(なぜ帰化したいか?)を添付しなければなりません。この動機書は申請人の方が自筆で日本語で記入する必要があります(もちろん内容については行政書士がサポートさせて頂きます)。

そして帰化許可申請書を法務局に提出した後、だいたい2~4ヶ月後に法務局内で申請人本人の面接があります。この面接には手続きを行う法律家(行政書士や司法書士)を含め、誰も同席出来ません。

この際、担当官から様々な質問を日本語でされますので、日本語で回答しなければならず、日本語での会話が上手く出来ない場合、筆記での日本語テストをされる場合もあります。この筆記テストはだいたい小学校3~4年生レベルと言われています。ですので、日本語での会話がほとんど出来ないような状態でしたら永住者ビザを目指されるか、小学校4年生レベルの日本語が話せるように勉強されてから帰化申請をすべきです。

 

 

 

<条件が一部免除されるケース(簡易帰化)>

1、住所要件の免除(国籍法第6条)

以下(a)(b)(c)(d)のいづれかに該当する場合は

「1、引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所要件)。」を備えなくても帰化許可をすることができる。

 

(a)日本国民であった者の実子で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者。(養子は除きます)

(b)日本で生まれた者で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有する者。

(c)日本で生まれた者で、その実父又は実母も日本で生まれた者。(養親は除きます)

(d)引き続き10年以上、日本に居所を有する者。

※「居所」とは、生活の本拠ではないが現在そこで生活している場所のことです。例えば、単身赴任先・入院先の病院・学生の下宿先等です。

 

 

2、住所要件・能力要件の免除(国籍法第7条)

以下(a)(b)のいづれかに該当する場合は

「1、引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所要件)。」及び、

「2、20歳以上で、かつ本国の法律上行為能力を有すること(能力要件)。」を備えなくても帰化許可をすることができる。

 

(a)日本国民の配偶者で、引き続き3年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有するもの。(婚姻期間の制限はありませんので、例えば留学ビザで3年在留していて、日本人と結婚された場合、即この条件に該当することになります。)

(b)日本国民の配偶者で、婚姻の日から3年以上経過し、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有するもの。(外国で結婚され2年外国で過ごし、その後帰国して1年経過したケースはこの条件に該当することになります。)

 

 

3、住所要件・能力要件・独立生計要件の免除(国籍法第8条)

以下(a)(b)(c)(d)のいづれかに該当する場合は

「1、引き続き5年以上日本に住所を有すること(住所要件)。」及び、

「2、20歳以上で、かつ本国の法律上行為能力を有すること(能力要件)。」並びに、

「4、本人、又は本人と同一生計の配偶者等の親族が、日本で独立して生活していける資産又は、技能を有すること(独立生計要件)。」を備えなくても帰化許可をすることができる。

 

(a)日本国民の実子で、日本に住所を有する者。

(b)日本国民の養子で、引き続き1年以上日本に住所を有し、かつ、養子縁組の時点で本国の法律により未成年であった者(養子縁組後に養親が日本人になった場合も含みます)。

(c)日本の国籍を失った者(以前日本に帰化した後に、日本の国籍を失った者は除く)で、日本に住所を有する者。

(d)日本で生まれ、かつ出生の時から国籍を有しない者で、その時から引き続き3年以上日本に住所を有する者。

手続きの流れ

①行政書士による、メール・電話、又は来所での無料相談

⇒まずお客様の今までのご状況と、帰化を希望される理由を詳しくお聞かせください。その上で帰化許可が取得出来る可能性があるか?取得する為に不足する要件は何かを調査します。

②法務局での事前相談

お伺いした内容をベースに、法務局に行政書士が事前相談に行きます。相談内容としては帰化許可の見込みと、必要書類の確認です。大阪市内の方でしたら谷町2丁目の大阪地方法務局本局3階の国籍課になります。

③契約手続き

⇒相談者様の帰化許可申請について、法務局で行った事前相談の結果とともに、帰化許可が取得出来る可能性がどの程度あるかということを、必要なてつづき費用とともにご説明させて頂きます。その内容でよろしければ契約手続きを行います。契約時点では面談は必須ではありませんが、法務局へ申請するまでに1回は直接面談をする必要が御座います。

④書類作成・収集

⇒帰化許可申請に必要な書類を作成、収集します。依頼者様にご用意頂く書類もご案内しますので、期限までに収集し当職にお渡しください。

⑤本国戸籍収集及び翻訳作業

⇒委任状を頂き、こちらで申請者様の本国戸籍を収集します(ご本人様に収集して頂くケースも御座います)。その戸籍を日本語に翻訳します。翻訳会社に依頼しますので別途40,000~80,000円程度翻訳料がかかります(申請者様側で翻訳して頂けるならその費用はかかりません)。

⑥法務局へ帰化許可申請書提出

⇒当職が作成収集した帰化許可申請書を、お客様の住所地を管轄する法務局に申請者様ご本人が提出します。当日書類の簡単なチェックがありますので30分程度かかります。なお、帰化許可申請は法務局に支払う手数料は無料です。もちろん当職も当日、窓口まで同行致しますのでご安心下さい。また申請書類一式のコピーも申請者様にお渡しします(⑧本人面接の際に必要です)。

 

<①相談から⑥法務局への申請まで、通常40~60日程度で可能です>


(法務局から指示があった場合)

⑦追加指示書類作成提出

⇒帰化許可申請を提出した後、法務局が必要と判断した書類を追加で提出するよう指示が来るケースが御座います(この追加指示は申請者様に直接電話されるケースが多いです)。連絡がありましたら、その内容を当職にお知らせ頂きましたらこちらで収集し提出します。この際、お客様に収集いただく必要がある書類もありましたら収集にご協力ください。

⑧法務局で本人面接

⑥の帰化許可申請から2~4ヶ月経過したころに、面接の電話が法務局から申請者様にかかってきます。この面接には手続きを行う法律家(行政書士・司法書士)を含め、誰も同席出来ません。この際、担当官から様々な質問を日本語でされますので、日本語で回答しなければならず、日本語での会話が上手く出来ない場合、筆記での日本語テストをされる場合もあります。この筆記テストはだいたい小学校3~4年生レベルと言われています。なお、面接でされる質問内容は人によって様々ですが、帰化の動機や犯罪歴(交通違反含む)の内容確認などは間違いなくされますし、基本的に申請書の内容の確認がほとんどですので、⑥の帰化許可申請時にお渡しする、申請書のコピーをよく読んで頂き、面接時に話す内容と齟齬が出ないようにして頂ければ問題ありません。

⑨帰化許可通知又は、不許可通知到着

⇒⑧の面接から6ヶ月~1年程度経過後、法務局より帰化許可又は、不許可通知が申請者宛に到着します。本当に「忘れたころに」というくらい期間があきますが、様々な調査が行われていると思われます。

(許可の場合)

⑩-1 報酬受領

⇒当所ではこの時点で報酬を頂戴します。175,000円×消費税(8%)=189,000円をお支払い下さいませ。

(不許可の場合)

⑩-2 業務終了

⇒前述のとおり、不許可の場合は費用は頂きません。帰化申請の場合、在留許可と違い、法務局側から不許可の理由を聞くことが出来ません。ただ、帰化条件を満たしていない場合は少なくとも、その条件が満たされるのをまって再申請された方がよいと思います。

 

<必要書類一例>

帰化許可申請は、収集する書類がとても多いという特徴があります。一例として日本人と結婚した韓国籍の特別永住者のサラリーマンの必要書類を記載致します。

1、親族の概要を記載した書面

2、履歴書(15歳未満は不要)

3、帰化許可申請書

4、帰化の動機書

5、韓国の基本証明書(申請人分のみ)

6、韓国の家族関係証明書(申請人・父・母分)

7、韓国の婚姻関係証明書(申請人・父・母分)

8、韓国の入養関係証明書(申請人分)

9、韓国の親養子入養関係証明書(申請人分)

10、韓国の除籍謄本(出生時からのもの)

11、 5~10までの翻訳文(翻訳者の住所・氏名・翻訳年月日も記載必要)

12、パスポートのコピー

13、日本国の出生届記載事項証明書(申請人分)

14、日本国の婚姻届記載事項証明書(父・母分)

15、日本国の配偶者の戸籍謄本(申請人の親兄弟が帰化している場合はその者の戸籍謄本(帰化の記録のある分まで)も必要)

16、住民票(申請人・配偶者分)

17、生計の概要を記載した書面

18、給与明細書直近1ヶ月分(申請人・配偶者分)

19、源泉徴収票直近1年分(申請人・配偶者分)

20、市府民税の納税証明書直近1年分(申請人・配偶者分)

21、市府民税の課税証明書直近1年分(申請人・配偶者分)

22、運転免許証のコピー(申請人分)

23、運転記録証明書(申請人分:3ヶ月以内に取得したもの)

24、住居の賃貸契約書のコピー

25、現在の居宅付近の略図、前居宅付近の略図、勤務先の略図

 

以上が基本的に必要な書類となります。サラリーマンの特別永住者は最も書類が少なく済むのですがそれでも25種類必要で、さらに説明や補足の為に上申書やその他の書類収集が必要で、枚数としては80枚以上になります。申請人様が働きながらご自身ですることは不可能と言えます。

 

<実例>

上記<必要書類一例>にありますように、帰化許可申請は収集書類の数だけでも大変な量ですが、取得することも様々な苦労やノウハウが必要なケースがあります。当職が取り扱った案件を2件ほど例示します。

 

◎1件目:どこの役所に届出したか分からない出生届記載事項証明書・婚姻届記載事項証明書

申請人様は35歳前後の方、ご両親は70歳前後の方でした。そしてご両親は若いころに引越しを何度も繰り返されていたので、婚姻届をどこの役所に出したのか覚えていないということがありました。出生届記載事項証明書と、婚姻届記載事項証明書は、本人が提出した役所に文書として残っているものなので、直接その役所に交付申請を出さなければ証明書の発行はされませんし、それがどこの役所だったかも調べる術もないのです。

ですから、本人が分からない場合、外国人登録原票記載事項証明書を取り寄せて当時に居住していた住所を調べて、本人の記憶を辿りながらあるかもしれない役所に行くしかありません(※電話で問い合わせても当然答えてくれませんので)。結果、1件目2件目の役所では該当がなく、3件目の役所でやっと婚姻届記載事項証明書が見つかりました。出生届記載事項証明書と、婚姻届記載事項証明書は30年以上前のものですから、記憶が薄れていることが多く面倒な手続きのひとつといえます。

 

◎2件目:韓国戸籍の取得はたいへん!

申請人様が韓国籍の方でしたので、心斎橋の韓国領事館で韓国戸籍を取得することになりました。手続きとしては「家族関係登録簿等の証明書交付申請書」という申請書ひな型が領事館にありますのでそれに必要事項と希望通数を記載して、5、基本証明書・6、家族関係証明書・7、婚姻関係証明書・8、入養関係証明書・9、親養子入養関係証明書・10、除籍謄本を取得します。

これにより、5、基本証明書・6、家族関係証明書・7、婚姻関係証明書・8、入養関係証明書・9、親養子入養関係証明書までは簡単に取得できます。

問題は10、除籍謄本です。韓国では2008年1月1日に戸籍法が改廃され、それまでの戸籍が全て除籍謄本となり、2008年1月1日以降は戸籍は家族関係登録簿に移されることになったのです。ですから、2007年12月31日より前の戸籍記録は全て除籍謄本になっているため、それをさかのぼりながら取り寄せていく作業が必要となります。しかし、戸籍は、戸主相続や分家、婚姻等の理由で新たに編製されていくものですので、最初にとれる除籍謄本を翻訳し、そこから除籍謄本の取り寄せと翻訳を繰り返し本人・父・母の出生まで遡ってして作業をしていくことになります。

除籍謄本と一言でいっても、そのようなものですから、「誰のどの本籍地だったときの除籍謄本が欲しい」としてさかのぼっていかなければならず、素人の方ではまず不可能と言えます。また、韓国領事館は担当者によって様々ですが、日本の役所と違い親切丁寧な対応は期待出来ませんから、なおのこと心が折れてしまうと思います。

ちなみにこの方のケースでは、除籍謄本だけで12通ほど取り寄せることとなり、3回韓国領事館に出向きました。領事館は平日の日中しか開いていませんので仕事をされている方には非常に大きな負担になりますね。

更に参考までですが、韓国戸籍は日本統治時代からありますので、漢字表記からハングルに変更した際に、転記間違いなども相当数あり、正しい手続きをとっても除籍がさかのぼれなくなるケースなどもあります。ですので帰化許可申請はやはり専門家にお任せされることをお勧めします。

 

<帰化許可に関して法務局(法務大臣)の考え方>

​(a)帰化は国内・国際情勢にも影響される。

帰化許可に関しては法務大臣に、永住者ビザ以上の広範な裁量権が認められています。ですから、国籍法第5条に定める条件を満たしていても許可するかしないかは、国内情勢・国際情勢や、申請人の本国と日本との関係などを総合的に考慮し、法務大臣の裁量で決められるということになります。

 

(b)参政権を与えられるということは、日本の主権者になるということ。

理由としては、帰化は日本人になることを認めることであり、参政権も付与されることになるため、日本国の主権にも影響を与えます。例えば、ある特定の国家から、日本に大量に帰化された場合、その国家の意向が日本国の政治にもある程度反映される可能性があります。また、永住者ビザ同様、外国人在留制度で担保されていた外国人の動向をチェックすることも出来なくなります。ですので、帰化許可には申請人の国籍やこれまでの素行、国等の負担にならない経済力があるかという点などを慎重に検討し判断するということになります。

 

 

<判例> 帰化不許可処分取消請求事件(東京地裁平成19年7月3日判決)

◎事件概要

日本で生まれ育った韓国国籍の家族が帰化許可申請をしたが、全員不許可となり、争点1として「本件決定について、国の裁量権の濫用及び逸脱があるかどうか」、争点2として「本件決定について、具体的な理由が提示されないことにより、本件決定が違法となるかどうか」という2つの争点で、訴訟した事例。なお、国は不許可時点では不許可理由を明かさず、本件訴訟においても「諸事情を勘案し、今しばらく生活状況を観察する必要があると判断した」旨を主張したにとどまっている。

⑴父Aは日本で生まれ、日本の小学校・中学校・高校を卒業した。

⑵父Aは母Bと結婚し、二人の間に子Ⅽが産まれた。

⑶Aは30年以上前に浄化槽清掃許可を受け、清掃業の会社を設立し、現在は年商4億円、従業員25名、車両数30台の規模である。なお、Aが同社の代表取締役、BⅭが取締役となっている。

 

◎東京地裁の判旨

・争点1について、

上記事件概要⑴~⑶を見る限り、帰化条件を定めた国籍法第5条第1項各号を満たしている可能性が高い。しかし、国が外国人の帰化を許可するか否かにあたっては、国籍法第5条第1項各号の条件を備える者に対しても、なおその帰化を不許可とすることができる広範な裁量権を有しているものと解される。

このことからすれば、A等が国籍法第5条第1項各号の条件を備える者であったとしても、国が諸般の事情を考慮し、現時点では、今しばらくA等の生活状況を観察する必要があると判断したとしても、そのことをもって、裁量権を濫用または逸脱した違法があるとまではいうことはできない。

なお、A等は地元の法務局で、従前ならばAのようなケースは許可がされていたとの説明を受けた旨主張するが、帰化許可の判断は、そのときどきに存在する事情を広く総合考慮して行われるものであるから、仮にそのような事実があったとしても、上記判断を左右するようなものではない。そうすると、この点についてのA等の主張は採用することが出来ない。

 

<解説>

国籍法第5条第1項各号に定める帰化条件は、あくまでも必要条件であって、それを満たしていても法務大臣の裁量で不許可にしても裁量権の濫用や逸脱とはいえない。また以前ほぼ同条件の案件で帰化許可されたことがあったという主張も、そのときどきで状況は変わるわけで、様々な事柄を総合的に考慮して判断する裁量権が法務大臣には与えられているので、認められないと判示しています。

 

・争点2について、

A等は、帰化不許可決定に際に、国から不許可になった理由の提示がなかったことについて、理由の提示がなければ、国が裁量権を濫用又は逸脱したか否か検討のしようもなく、また、不許可決定の際に、国が「取り消しの訴えをすることができる」旨を教示しているが、不許可の理由が分からなければ取り消し訴訟の主張立証も出来ない為、この教示の意味も失われることを根拠に、国が不許可決定時に不許可の具体的な理由を提示しなかったことは、A等の人権を侵害するものであり、本件不許可決定は違法であると主張する。

そこで検討するに、行政手続一般について規定している行政手続法第8条は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、処分の理由を示さなければならない旨を定めている。しかしながら、帰化に関する処分は、基本的に国家の主権に関する事項であることから、行政手続法の適用除外とされており(行政手続法第3条第1項第10号)、ほかに帰化の不許可処分の際に、理由を示さなければならないとする方の定めは無い。

実質的に見ても、行政庁は、帰化の許可について広範な裁量権を有しており、帰化の不許可の理由も国籍法第5条第1項各号の不該当に限られないのであり、そうした場合には、不許可の理由を具体的に提示することが相当でないことも考えられる。このように考えると、帰化の不許可処分について、理由が提示されないことによって、A等の上記便宜が、ほかの処分の場合と比べて制限されたとしても、当該処分に違法があるということはできない。

また行政事件の訴訟に関して定める、行政事件訴訟法第46条には、「行政庁は、取消訴訟の提起に関する事項を教示しなければならない」旨定める。しかしながらこれは、処分の相手方に取消訴訟の提起に関する適切な情報を提供し、権利利益の救済を得る機会を十分に確保する趣旨であると解されるのであり、それ以上に処分の相手方の主張立証の便宜を図る趣旨のものと解することはできない。のみならず、理由の提示がなければ、処分の相手方が取消訴訟において、必ずしも常に違法事由の存在を主張立証できないわけではないと考える。

こうした事情にかんがみると、帰化の不許可の処分に際し、具体的な理由の提示を要すると解することは出来ないし、このことが行政事件訴訟法の趣旨に反したり、A等の人権を侵害するということもいえない。

 

<解説>

行政手続法で「不許可の場合は理由をいわなければならない」としているが、帰化申請は、その行政手続法を適用しないと定めているし、それ以外の法律にも、理由を提示しなければならない根拠がないので不許可の場合に理由をいわなくても問題はない。

また行政事件訴訟法にも「取消訴訟の提起に関する事項を教示しなければならない」とされているが、これは取消訴訟が出来ることを伝え、不許可を受けた者が権利救済の機会を見落とさないようにさせる程度の規定であって、それ以上に不許可を受けたものに利益を与えることを予定していないし、不許可理由をいわなくても、取消訴訟において必ずしも不便が多くなるとは言えないと判示しています。

 

以上によれば、本件不許可決定は、いずれも違法に行われたものということはできない。そうるとA等の請求はいずれも理由がないから、棄却する。

 

<解説>

帰化許可は国家の主権にかかわる重要な決定である為、法務大臣に与えられる裁量権は広範です。仮に国籍法第5条に該当しても帰化を認めるか否かは法務大臣の判断にゆだねられており、しかも不許可とした理由の提示も必要ないとされているので、申請者としては非常に反論が難しいと言えます。

そういう意味では、訴訟まで進んでも勝訴できる可能性は極めて少ない為、最初の帰化申請の時点で、条件をそろえ、かつ、法務大臣に疑いをもたれない書類づくりをすることが重要といえるでしょう。また帰化申請の時点にとどまらず、日本への入国時点から疑念を持たれないように生活し、申請をおこなうべきといえるでしょう。