⑷日本人(永住者)と結婚したので配偶者ビザに変更したい
日本人や(特別)永住者と結婚された場合に取得出来る可能性があるのが、「日本人(永住者)の配偶者等」ビザです。これは就労ビザではなく、身分系ビザと呼ばれますが、風俗業をのぞき、原則どんな仕事に就いても問題ないという非常に強い在留資格です。
<条件>
以下①②③全ての条件を満たす必要があります。
①日本人又は(特別)永住者と結婚し、相手方の戸籍に「申請人と結婚した」旨の記載が入ること
相手方の戸籍謄本が申請に必要です。ですから事実婚・内縁では不可です。
②申請人様の本国でも婚姻届を出すこと
申請人様の本国が発行した婚姻証明書も申請に必要です。
③同居して夫婦生活を営んでいること
単に「戸籍上結婚した」という記録があるだけでは足りず、実際に同居して互いに協力したすけあって夫婦生活を営んでいるという事実が必要です。
<在留期間>
取得時は1年間となるケースが多く、1回目・2回目の更新時に3年間又は5年間と増えていくケースが多いです。
その理由は、入国管理局の在留審査要領「1年間のビザの要件」に記載されています。
◎1年間ビザの要件
次の①②のいずれかに該当する場合は、3年間以上のビザは認められません。
①家族構成、婚姻期間等婚姻を取り巻くさまざまな状況からみて、婚姻及び配偶者の身分に基づく生活の継続性を1年に一度確認する必要があるもの
⇒該当するケースとしては、夫婦の年齢が10歳以上離れていて本当に夫婦関係があるか疑わしい、夫婦の収入が少なく今後生計を維持できるか疑わしい、夫婦の仕事がまだ勤務1年未満など生活が不安定な状態で今後生計を維持できるか疑わしい等です。
②在留状況等からみて状況を、1年に一度確認する必要があるもの
⇒該当するケースとしては、過去にオーバーステイしていた、過去に犯罪を犯したことがある、税金や国民健康保険料等に未納があるなど、申請人の素行に問題がある場合です。
配偶者ビザは条件が比較的やさしく、それでいて、なんでも就労できるビザがとれる為、残念ながら偽装結婚をされるケースがあります。ですので、入国管理局としては、本当の夫婦なのかどうかを実態面からしっかり審査し、数年様子を見て問題なければ3年以上のビザを与えようというスタンスです。ですから、我々行政書士としても、偽装結婚でないかどうかはチェックさせて頂き、その上で、真実の結婚である証拠を集め(夫婦間のメール(ライン)のやりとりや家族写真など)入国管理局に提出していくことになります。
<注意点>
①原則として夫婦同居は必須です。同居出来ないなら合理的な理由が必要。
合理的な理由がない限り、夫婦の同居は必須となります。合理的理由とは例えば、結婚後配偶者の転勤が決まり、申請人は飲食店を経営している為、その場所を離れられない、とか、子供に病気があり、現在の住まいの近くにある病院でしか専門的な医療が受けられないと認められるなど、よほどの理由がある場合だけです。
配偶者と同じ県(府)に住んでいるのに同居していないとなると、いくら理由を説明しても、よほど誰でも納得出来るような理由でない限り、マイナスになります。ご夫婦の結婚観(価値観)などは様々あると思いますが、日本人(永住者)の配偶者ビザを取る為には、同居は必須と考えられた方がよいでしょう。
②質問書が一番重要!ウソ・間違いのないように!
日本人(永住者)の配偶者ビザの審査において、最も重要な書類は【質問書】です。
(質問書の画像)http://www.moj.go.jp/content/001226222.pdf
(a)偽装結婚ではないのかの確認の為、結婚や出会いの経緯を、とても細かく聞かれます。
上記画像にもあるように、お二人が出会われた経緯・場所から、出会いから結婚に至るまでお互いに渡航されて会っておられたのであればその渡航履歴、紹介者の情報(在留カード番号まで必要です)、婚姻届提出の際に署名された証人2名の名前・住所・電話番号、紹介者と申請者の関係、夫婦の間の通話言語、結婚式を行った式場の情報、過去の結婚歴まで記載し、それを補足できる資料の添付もうながしています。
これは入国管理局が、偽装結婚ではないのかを確認する為に聞いてきていることです。以前のことになるかと思いますが、しっかり思い出して頂き、間違いのないように記載する必要があります。
(b)一度提出した質問書は間違っていても訂正出来ません。しっかりと調べて提出しましょう!
例えば出会われた場所・日時が、夫婦の当時の住民票(平成24年7月以前であれば外国人登録)に記載されていた住所と、遠く離れている場合、なぜその場所で出会ったかという説明まですべきです。ですから、過去の住民票(外国人の方で平成24年7月以前の住所を調べる場合は外国人登録原票記載事項証明書)を調べ、出会った場所と当時の住所地の距離も確認し、記載する必要があります。また結婚に至る経緯の説明には、お二人の間で交わされたメール(ライン)の画像や、当時一緒に撮った写真なども添付すればするほどプラスになります。渡航履歴も出入国記録開示請求を行えば開示出来ますので正確に記載してください。
入国管理局は、この提出された書類をベースにして調べますので、入国管理局が調査した内容と、記載内容に間違いがあれば「嘘をついているのでは」と思われ、審査にマイナスになります。
③無職・生活保護の場合は、不許可になる可能性がある。
入国管理局の在留審査要領では、日本人の配偶者等の審査に関する事項は、そのほとんどが黒塗りになっており、その全容をうかがい知ることが出来ません。ただ、審査に当たっての留意事項として「公共の負担となっている者、又は公共の負担となるおそれのある者であると認められたものについては以下のとおりとする。」という一文があります。
上記文言があるということは、公共(国)の負担となるおそれがある者は在留許可を出さないといっているといえます。そして公共の負担として、最も有名なものは生活保護です。
(a)生活保護の場合は、不許可になる可能性が高くなる。
夫又は妻となる日本人が生活保護者である場合、その結婚する外国人の方も一緒に生活保護になる可能性が高いので、公共(国)の負担は増えます。ですので、日本人側が生活保護者である場合、日本人が生活保護から脱却する可能性が高い、外国人の方が十分な収入を得ている、親族などが十分な資産と援助する意思がある、などの事情がなければ在留許可が下りない可能性が高くなります。
(b)できれば無職の方は、就職してからビザ申請をしたほうが安全です。
同じ理屈で、現時点で日本人配偶者側が生活保護を受けていなくても、無職であれば、十分な資産がなければ今後生活保護になる可能性が高いとして、在留許可が下りない可能性が高くなります。
④偽装結婚や、それを補助した場合、3年以下の懲役刑になる場合も!
前述のとおり、日本人(永住者)の配偶者等は、技術・人文知識・国際業務などの就労ビザと比べて比較的かんたんにビザ取得が出来る為、残念ながら偽装結婚を企てる方やそれをたすける方がいます。しかし、入管法第70条によって、申請人本人はもちろん、それをたすけた方も、入管法第74条の6の2第1号により、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます。またこれが営利目的の場合は、同条第2項により、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます。
お金に困っている方が、怪しげな団体からこのような取引を持ち掛けられることは少なからずあるようですが、軽い気持ちでやってしまうと、最大5年以下の懲役という非常に重い罪に問われますので、絶対に偽装結婚には加担しないようにお気をつけ下さいませ。また、我々行政書士も偽装結婚を知らずに申請取次をしてしまうと罪に問われる危険性を負っています。その為、当職が怪しいと判断した場合は、お断りさせて頂きますのでご了承下さいませ。