⑶経営管理ビザ1年で在留しているが次回更新が難しそう

昨年1年の経営管理ビザを取得したが、結局1年間具体的な事業が出来ず経過してしまい、決算の売上高がほとんど無かった場合や、決算が大赤字になってしまい事業の継続性が疑われるというような場合、そのまま在留資格更新申請をしても今回の経営管理ビザが更新できない可能性が高くなります。

【経営管理】ビザは基本的に、日本で継続的に事業経営又は事業管理を行う為のビザですから、上記のようなケースの場合、その事業が継続的に行えるか疑問がありますし、売上高がほとんど無いような場合は、そもそも経営管理行為をする意思がないのかというところから疑問を持たれる可能性があります。日本に在留する為に、ウソをついて経営管理ビザを取得し、実際は別のことをしているのではないかと疑われるということです。

ですから、経営管理ビザの更新時の添付資料として公表されている、法定調書合計表・決算書・住民税の課税納税証明書だけを提出しても、立証すべき【事業の継続性や将来性】及び【事業を行う意思】の証明が出来ない為、ビザ更新が出来ないということになるのです。このような場合は、専門の行政書士に相談し、証明に必要な書類を準備する必要があるでしょう。

 

 

<条件>

①事業の継続性が認められること。

決算書において赤字になっている、又は債務超過になっている場合、事業の継続性が疑われます。ただし、事業というものは予定通り進むことの方が少ないものであり、特に最初の決算は、開業時の投資などで経費がかさむ反面、事業はまだ始めたばかりで思うように売り上げが上がらず赤字になることは珍しくありません。

 

(a)赤字決算になった場合は、改善のために事業計画書の添付が必要!

赤字決算になったとしても絶対にビザの更新が出来ないということはありませんが、次の決算期で黒字にするというしっかりとした事業計画書の添付は必須といえます。

 

(b)債務超過の場合は、税理士等の評価書面の添付が必要!

借金が資産をうわまった状態である債務超過の場合、さらに事業の継続性を疑われますが、入国管理局の在留審査要領では、1回債務超過となっても、中小企業診断士や公認会計士等が作成する「1年以内に債務超過が解消され、改善の見通しがある」という評価書面を添付することで、1年の経営管理ビザ更新を認めるという方針を採っています。

 

(c)2期連続の債務超過の場合は、ビザ更新はかなり難しい!

しかし、2期連続で債務超過となった場合は、極めて厳しくなります。上記の事業計画書、改善の見通しの評価書面はもちろんですが、増資や他企業からの支援など具体的なプラス要因がなければビザの更新は出来ない可能性が高くなります。

 

 

②生活上、国等の負担となるおそれがないこと。

入国管理局の在留審査要領には、「経営管理ビザの更新時には【在留資格該当性】及び、【上陸基準該当性】について問題がないか確認する。」と記載されています。在留資格該当性は、1年前に経営管理ビザを取得した際に、それを満たしているからこそ経営管理ビザが取得出来たわけですので、問題は【上陸基準該当性】の方です。

 

(a)税金や国民健康保険料が払えなければビザ更新ができない!

上陸基準とは、入管法第5条第1項第1号~第14号に規定されていますが、このケースは、特に第3号の「貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者は日本に上陸出来ない」という規定が関係します。

事業が赤字になりそうな場合や、債務超過になりそうな場合、経営者はまず自分の報酬を削ろうとするケースが多いです。そうすると、当然経営者個人の生活がひっ迫してくるものです。身分系ビザや永住ビザでない限り、外国人の方は生活保護は受けられませんが、収入が無い為税金や国民健康保険料が支払えないことなどが想定され、これは国等の負担となる行為といえます。

 

(b)節税もほどほどに!

経営者の報酬を0円などにして、何とか決算を黒字にしたとしても、この上陸許可基準(国等の負担にならない)に引っかかる可能性があります。非課税状態であっても、行政サービスは受けられるので、税金を払っていないのにサービスを受けるということは、国等の負担となっているということになります。

上記のとおり税金や保険料の未納はもちろん、非課税状態でもビザの更新が難しくなる要因の一つとなりますので、外国人の方は節税対策もほどほどにされたほうが安全です。

 

(c)報酬0円の場合は、資産などの存在を提示し、公共の負担にならないことの立証もする必要がある。

どうしても報酬を0円にしなければならない場合は、報酬がなくても十分な資産を持っているか、援助をしてくれる人物がおり、国等の負担にならないことの立証までしなければビザ更新が認められない可能性があります。

実際に当職もこのケースを扱ったことがあり、経営者の方が本国に持っている銀行口座の残高証明も添付してビザ更新許可を受けたケースがあります。

 

 

<注意点>

①その場しのぎの事業計画書では、次回ビザ更新時に困る!

上述しておりますとおり、経営管理ビザの場合、入国管理局に事業計画書の提出をするケースが多いですが、ビザが通れば終わり・・ではありません。次回のビザ更新の際に、前回提出した事業計画書も見られますので、事業計画書と全く違う内容になっていたりする場合などは、その釈明もすべきです。その場しのぎの計画書などを出してますと、それこそ事業の継続性や真実性が疑われます。

多少高い目標の事業計画を立てて自分自身を奮い立たせるということはあると思いますが、事業計画書は十分気を付けて作成してください。当然ながら当職が在留期間更新申請業務をさせて頂く場合は、この事業計画書の作成も協力させて頂きます。

 

 

②最低でも外国に滞在する日数が、日本での滞在日数を超えないように!

1年の間で、日本に滞在する日数が、日本以外の国で滞在する日数より少ない場合、ほかの条件が揃っていても経営管理ビザが下りないケースがあります。入国管理局の言い分としては、そんなに日本にいないなら、日本に入国する度に毎回短期の商用ビザで入国すれば足りるでしょうということです。特に貿易関係で、日本国以外の国で活動する日数が多い方はこの点もご注意下さい。

 

 

③株式会社の場合、社会保険未加入はマイナス!

株式会社の場合、従業員が1名でもいれば社会保険に加入する義務が生じます。また従業員がおらず社長1人だけの会社であっても、社長が会社から報酬を得ていれば社会保険に加入する義務が生じます。ただ、現在のところ、その義務を履行していない経営者が多いので零細企業の場合、社会保険未加入というケースもあります。

しかし、経営管理ビザ更新の際には、義務があるのに社会保険未加入ということも当然マイナスとなります。開業当初の苦しい時期に負担を増やすことは厳しいと思いますが、ビザが取れなければ元も子もありませんので、社会保険加入もして頂き、仮にまだ加入できていないならいつ加入できるかということも入国管理局に報告しておいた方が、誠実な経営者と見てもらえやすいと思います。