⑹ビザが切れそうだが、何とか日本在留したい
ビザは就労や勉強など特定の目的の為や、結婚などの身分関係に基づき許可されるものですので、ビザが切れるということは、その目的や身分関係がなくなったということですから、原則は一旦本国に帰国して頂かなければなりません。言うまでもなく、帰国までに就労ビザに該当する会社に内定が決まったり、留学ビザの該当する学校に入学出来たり、日本人や永住者、就労ビザを持っている方とご結婚されたりした場合は、その該当するビザに変更することが出来る可能性はあります。
またそれ以外の場合でも、一般的に知られていない救済措置的なビザも用意されているので以下ご説明します。なお、以下のビザは告示外定住、告示外特定活動といい、法務省や入国管理局のページにも記載されておりません。
我々専門職の人間が手に入れられる入国管理局の在留審査要領等に一部が掲載されているのですが、その情報も大半が黒塗りになっており、条件の全容は分かりません。あくまで、経験や予測によって記載しております。誤っていた場合でも責任は持てませんのでご容赦下さい。
(a)配偶者と離婚した者、又は配偶者が死亡した者(告示外定住1)
日本人又は(特別)永住者の配偶者であった方は、以下の条件を満たしていれば、その配偶者と離婚後、又は死別後も【定住者】ビザで在留出来ます。
<条件>
以下①②③④全ての条件を満たす必要があります。
①今後も日本で生活していける資産又は、技能を有すること。
②日常生活に苦労しない程度の日本語能力を有していること。
③税金や健康保険料の納付などの公的義務を怠っていないこと。
④離婚(死別)前まで、配偶者と正常な結婚関係、家庭生活を3年以上行っていたこと。
<注意点>
①「配偶者と正常な結婚関係、家庭生活を3年以上行っていたこと。」とは、同居していたことが必須ではありません。別居していた期間があっても、夫婦としての相互扶助、交流が継続していれば認められるケースはあります。例えば出稼ぎに他府県に行っていたが、その稼いだ給料の大半を配偶者に送金していたとか、メールやラインで週に1回以上交流の記録があるなどです。給料の大半を本国の親に送金し、それより少ない額を配偶者に送金していた等の場合ですと、正常な結婚関係と認められない可能性が高くなります。
②「日常生活に苦労しない程度の日本語能力を有していること。」とは、面接の際など申請人と面接官が意思疎通できる程度で足り、特定の日本語能力検定試験の合格までは求めていません。
(b)日本人との間に生まれた子を育てている者(告示外定住2)
日本人との間に生まれた子を養育する場合は、以下の条件を満たしていれば、【定住者】ビザで在留出来ます。
<条件>
以下①②③全ての条件を満たす必要があります。
①今後も日本で生活していける資産又は、技能を有すること。
②日本人との間に生まれた子の親権者であること。
③現に相当期間、日本人との間に生まれた子を、監護・養育していることが認められること。
<注意点>
①「日本人との間に生まれた実子」について、両親が結婚している場合はもちろん、両親が結婚していない状態で産まれた子(非嫡出子)であっても含まれます。また、その子の国籍は日本国籍でなくてもよいです。ただし、日本国籍を有しない非嫡出子の場合は、日本人の父から認知されている必要があります。
②配偶者のDV(暴力)により、婚姻関係の継続が難しいケースがあると思いますが、親権を放棄する内容の離婚を行ってしまうと、このビザは取れなくなります。上記、告示外定住1で取れる場合はよいのですが、告示外定住1は、公的義務の履行や、日本語能力、離婚まで3年以上の正常な夫婦生活が必要となり条件が厳しい為、子がいらっしゃる場合は、お子様の為にも申請者様の為にも親権をどうするかは冷静にご判断いただいた方がよいかと思います。
もし当人同士での協議が難しい場合は、京都府行政書士会がやられている「京都外国人の夫婦と親子に関する紛争解決センター(http://www.kyoto-shoshi.jp/support/)」というところで離婚調停をなさってもよいかもしれません。在留ビザ関係にも詳しい行政書士が調停委員をされいるそうなので、低い費用で、ビザの要件も勘案して調停をして頂けるということです。(この紛争解決センターを使えば、外国人に有利な条件の離婚調停が出来るということではありません。普通の調停委員はビザのことなどは理解していないところ、ビザのことも理解した行政書士が調停委員をしてくれるという事実上のメリットがあるという意味です。)
(c)配偶者と法律上結婚状態だが、事実上結婚関係が破綻状態である者(告示外定住3)
日本人又は(特別)永住者の配偶者である方で事実上結婚関係が破綻している場合は、以下の条件を満たしていれば、【定住者】ビザで在留出来ます。
<条件>
以下①②③全ての条件を満たす必要があります。
①今後も日本で生活していける資産又は、技能を有すること。
②税金や健康保険料の納付などの公的義務を怠っていないこと。
③法律上結婚状態であるが、事実上結婚関係が破綻していること。
<注意点>
「法律上結婚状態であるが、事実上結婚関係が破綻していること。」とは、
・夫婦両方が結婚を継続する意思がなくなった場合
・同居、扶助の協力扶助の活動が事実上行われなくなり、その状態が固定化していると認められ、結婚関係を修復・継続し得る可能性がなくなった場合
などを指します。
(d)日本人や(特別)永住者の養子であった者で、その養親が死亡した場合(告示外定住4)
このケースは、我々行政書士に対しても公表されていないのであくまで予測ですが、日本人等の養親が死亡した場合、その養子が在留出来るようにしたものと推測されます。
<条件>
以下①②両方の条件を満たす必要があります。
①日本において、日本人や(特別)永住者である養親に扶養されていたと認められること。
②今後も日本で生活していける資産又は、技能を有すること。
<注意点>
申請人が未成年等の為、実親や別の養親による扶養又は監護が必要な場合で、日本においてその実親や新たな養親に扶養される場合は、当該実親や養親に扶養能力がある必要があります。
(e)日本の大学等を卒業したが、卒業までに就職先が決まらず、まだ就職活動中の者及びその家族(告示外特定活動1)
この場合、原則的には一度帰国しなければなりませんが、就職活動のみを行うという制限つきで在留を認めるという制度です。また、就職先が決まっているが、卒業から就職まで期間が空いてしまうという場合でも、その間、申請人及びその家族が特定活動ビザで在留することもできます。
なお、既に現在お持ちのビザの期限が切れてしまっている場合には、この特定活動ビザは取得出来ませんので、期限が切れる前にご相談下さいませ。
(f)出国準備の為の特定活動(告示外特定活動2)
ビザ更新や変更申請は審査に通常20~40日程かかりますが、ビザ更新が認められなかった際に現在持っているビザの期限を超えてしまっているケースはよくあります。この場合、オーバーステイになってしまいますので、そのような不利益を回避する為、入国管理局は更新(変更)不許可の旨を伝える際に、出頭命令を出して、本人が出頭したら直接不許可の旨と、出国準備の特定活動ビザへの変更を打診します。この【出国準備の為の特定活動】ビザはその名のとおり出国準備の為だけに在留を認めるビザですので、通常1ヶ月程度の期間が定められます。
この出国準備の為の特定活動ビザの間に、在留資格変更申請を行うことは可能ですが、入国管理局と打ち合わせが必要ですので通常より難しい申請となります。場合によっては一度帰国し、在留資格認定証明書の交付を受けて再度入国した方がよいケースもあります。
以上(a)~(f)が、日本に在留されている方が、既定の就労ビザや身分系ビザ、留学ビザで在留が出来ない場合の特殊なビザです。
この「告示外定住ビザ・告示外特定活動ビザ」は、既定のビザでは在留出来ないが、法務大臣が過去に人道的見地から在留を認めた先例事案です。ですから、上記以外のケースでも人道的配慮が必要と思われる案件については在留が認められる可能性はありますので、お困りの場合は一度当職までお気軽にご相談くださいませ。