【お知らせ】

2026/8/8(土)
永住許可ガイドライン厳格化について(2026-8-8)

永住許可ガイドライン厳格化について(2026-8-8)

2026年8月4日に政府より永住許可に関するガイドライン改定案が発表されました。
これにより改定の概要がある程度わかりましたのでご案内します。

※あくまで改正案や報道を見た上での私見である為、事実と異なる部分はありますから詳しくは10月1日前後に発出される予定の永住許可に関するガイドラインをご確認の上、正しい情報を取得下さいませ。

参考:「永住者」の適正化に係るパブリック・コメントの実施について
参考:出入国在留管理庁 永住許可に関するガイドライン
 

ガイドライン改定案概要

⑴年収要件

原則として申請時点で申請者の属する世帯年収(申請人と配偶者の年収の合算)の額が世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準の額に継続して達しているかを考慮要素とします。
※なお配偶者が家族滞在ビザの場合のアルバイト収入は含まない。
※国外親族も源泉徴収票上で扶養に入れている場合はその者も世帯人数に含む。世帯人数が5名以上になった場合は必要年収が増額される(ということは独身は除き2名~4名までは同じ収入水準を年収要件としていると読めます)。

日経新聞の8月7日社説によると【24年分の民間給与実態統計調査によると平均給与は478万円】と記載されております。仮にこの指標を使うと、上回るですから独身者の場合の年収要件は500万円程度なのか?とも予測されます。
なお厚生労働省の2024年の資料では、全世帯の平均世帯年収は536万円ですが、高齢者世帯を除くと666万円となっており、おそらく夫婦2人以上の世帯ではこの666万円あたりの世帯年収を見込んでいるのではないかとも予測されます。

今までですと単身者では年収300~310万円前後が永住許可水準と認識されていた為、求められる水準は1.7~2.2倍程度の大幅な増加ではないかと考えています。

ただこれを年齢別で考えるのか、地域別で考えるのかなど入国管理局がどのように運用するのかは、申請を重ねて実例を見ていくしか方法はありません。

就労ビザの方の永住許可申請は直近5年間の収入で判断されますが、2019年に3年間から5年間に増えた際は、変更後2年内は、5年間の内すべての年度で収入が基準に達していなくてもある程度柔軟に見てくれていましたので、その運用から考えると今回も最初の数年間は、5年間全期間が基準に達していない場合でもある程度柔軟に判断してくれるのかもしれません。

 

⑵厚生年金水準要件

【将来受給できる年金額が、上記⑴年収水準で厚生年金に30年加入していた水準に達するか、又は水準に達しない場合であっても、補填できる預貯金などがあれば受給見込額が受給年金水準の額に達しているものと評価します】とされています。

この補填資産額の基準は申請時の年齢に応じたものとし、年齢の若い申請者は年金の受給開始年齢(65歳)に近い年配の申請者に比べ、補填資産額の基準は低くてもよいものとなります。

例:年収500万円・厚生年金30年加入の場合の年金年間受給額約143万円
平均寿命が2025年の日本人の平均寿命は男性が81.35歳、女性が87.33歳となっておりますので、65歳から85歳まで20年受給すると考えますと、主たる申請者は143万円×20年=2,860万円あたりが求められる年金額ではないかと予測されます。

普通に考えると留学で入国し大学を卒業後就職するとすれば、22~25歳くらいから30年ずっと厚生年金加入の会社で勤務してやっと達する基準ですから55歳くらいになるまで永住申請をする資格すら取得できないのかという絶望的な基準ですが、保有する預貯金や不動産などで補填できるということですので、本国に資産があれば、それを日本に移転させることで早めに申請が出来る可能性があり、厳格化以降の永住申請はその方法が主流になるのではないかと考えます。

【例】年収500万円で30年間厚生年金加入していた場合、年金受給額は年間140万円程度と算定され、それを65歳から85歳まで20年間受給すると考えると約3,000万円となります。
この3000万円を水準として、年収500万円で10年間厚生年金に加入していた場合、年金受給額は年間50万円程度と算定されそれを65歳から85歳まで20年間受給すると考えると約1,000万円となります。
そしてそれを補充するため、ご自身で給料から1000万円を貯金し、本国から親からの贈与財産などを1000万円日本に持ってくれば年金受給総額1000万円+貯金1000万円+親からの贈与1000万円=合計3000万円となり、厚生年金30年加入水準に達するというような形になるのではないかと思慮します。

ここでポイントしては、
①資産の全部を親からの贈与という形ではなく、一部は自身の給与で貯金し、一部を親からの贈与という形で無ければならないのではないだろうかという点
②入国管理局は間違いなく、誰かからお金を借りて一時的に口座にお金を入れる【見せ金】を疑うはずなので本国から送金する場合は、その形成過程と送金過程を全て記録に残しておくこと(永住申請の直近でいきなり全額入れるのではなく、毎年100万円ずつ入金していくような形。中国の国外送金制限などもあるので、このように細かく送金する方が見せ金を疑われる危険性は減ると考えます)

だと考えます。
 

◎年収要件と年金水準要件ポイント

2026年8月4日に発表されている改正ガイドライン案の中で重要な点は、永住許可において
・日本人(永住者)の配偶者と子の扱いが見えたことと、
・高度専門職1号からの永住許可申請の優位性は維持される可能性が高いことです。

まず日本人(永住者)の配偶者と子については、永住許可の3要件【素行善良要件】【独立生計要件】【国益要件】の中で、【素行善良要件】と【独立生計要件】については、もともと要件に適合することを求められないとされていましたが、今回新たに設定された【厚生年金水準要件】が【独立生計要件】なのか【国益要件】なのかによって、【年収要件】には適合を求められなくても【厚生年金水準要件】を求められるなら、実質非常に永住許可申請は厳しいと考えていました。

しかし今回の【永住許可に関するガイドライン改定(案)(概要)】の表には
年金水準は「3 国益要件」について 、の枠ではなく、収入と同様に「2 独立生計要件」について 、の枠に入れられており、日本人(永住者)の配偶者と子の永住許可申請時に適合を求められない基準であることがはっきりしました(誤りでなければ)
ただ「これらの者は独立生計要件に適合していることは求められませんが、 申請者の属する世帯が現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である状況にある場合には、消極評価をすることがあります
と注意書きがなされています。
【現に公共の負担となっている場合】とは【生活保護】を指すと考えられます。
【そのおそれが現実的である状況】とはおそらく年収が著しく低い場合を指すのではないかと考えられます。

ただ少なくとも【年収要件】と【厚生年金水準要件】に適合しなくてもよいということは、他の申請者に比べ永住許可申請において極めて優遇されると言えます。

なお日本人(永住者)の配偶者について、在留期間10年の特例として婚姻期間3年かつ本邦在留期間1年で永住許可申請が出来ていたところ、婚姻期間5年かつ本邦在留期間3になっております。


次に、他の在留外国人と比較して大幅な優遇を行い、高度人材を呼び寄せる。という目的で設定されていた高度専門職1号についてどう扱うのか?と考えていたのですが、今回も在留期間10年のところ高度専門職ポイント点数70点以上は3年、80点以上は1年という特例が維持されました。
もちろん年収要件と厚生年金水準要件は免除されませんが、逆に言えば在留1年や3年で永住許可申請を認めるということは、当然ですが永住許可がされる可能性があるということです
最低10年間は厚生年金保険料を払い続けなければ、いくら金融資産があっても永住許可が認められないのであればこの特例が無意味になる為、今回廃止されたはずですので。

ですから、高度専門職1号の申請人は年収要件は最低限クリアしなければならない条件として、補填資産が1000万円以上あれば、厚生年金水準要件もクリアできる可能性があるかもしれないと推測します。

高度専門職ビザは後述する日本語能力要件も適合することを要しないとされており、明らかに永住許可申請においての優遇が維持されていると考えられます。


以上のとおり、通常の就労ビザの方にとって、今回のガイドライン超厳格化により永住許可申請は遥か先に霞んでみえないようなレベルになってしまったと言えますが、日本人(永住者)の配偶者及び子と、高度専門職ビザの外国人にとってはまだ道が残されたと考えられます

これは日本政府及び入国管理局の【子どもが幸せに暮らせるように(その為には親も一緒に暮らす必要がある)】【高度専門職外国人は国際競争力強化の為日本にたくさん呼び寄せたい】という姿勢を表すものかと考えられます。
 

↑⑴⑵は【独立生計要件】です

↓⑶以降が【国益要件】です

 

⑶在留期間要件

高度専門職ビザや日本人(永住者)の配偶者等、定住者など、原則10年間在留が必要とされているところ、1~5年に短縮されるということ以外に、今回のガイドライン改定案に明示されたことが、途中どれくらいの期間出国した場合に在留が切れると判断されるか?という点が示されました。

過去10年以内において、
①合理的な理由なく、1回の出国で6か月以上不在とした期間がある場合、又は
②合理的な理由なく、通算して2年6か月以上不在とした場合
は原則として消極評価をするということです。

※合理的な理由とは、新型コロナウイルスにより航空機数が激減し事実上渡航が不可能だった場合などを指すと考えられます。
 

⑷現在保有するビザの在留期間要件

・令和9年3月31日までに申請があった永住許可申請の場合:
在留期間3年以上であれば要件に適合するものとして取り扱う

・令和9年4月1日以降に申請があった永住許可申請の場合:
原則在留期間5年のみ要件に適合するものとして取り扱う

例外として、 以下①②③を満たす場合のみ在留期間3年以上であれば要件に適合するものとして取り扱う
①令和9年3月31日時点において在留期間3年を有しており、
②その永住許可申請が令和9年4月1日以降に行った初回の永住許可申請で、
③令和9年4月1日から当該「3年」の在留期限までの間にその永住許可申請の結果を受ける場合
 

⑸日本語能力要件

CEFR(日本語教育参照枠)・B1相当(自立した言語使用者)以上であることが要件となりました。
B1相当ですので、日本語能力試験(JLPT)N2又はN3合格相当と考えられます。

例外として以下の①②③の者はこの日本語能力要件に適合していることを要しないとされています。
①高度専門職ビザ外国人及びその配偶者・子
②日本の学校教育法が規定する初等教育又は中等教育を累計6年以上受けた者
③永住者の子(その子を養育する親がB1相当レベル以上の日本語能力を有しており、かつ、その子が日本で出生した場合に限る)
 

⑹我が国の制度・ルール等への理解要件

生活・就労ガイドブック」に記載されている事項を中心に、我が国の制度・ルール等を理解しているかの確認を行い、その理解が一定水準以上に達しているかを考慮要素とするとされています。
そしてその確認方法は【出入国在留管理庁長官が指定する方法】とされています。
おそらくこれは本人が入国管理局へ出頭し、試験を受けるような形なのではないかと予想されます。
150ページ以上ありますが、とにかく読み込むしかないでしょう
 

⑺学齢期の子の就学要件

申請者が学齢期にある子を養育する親である場合には、子が小学校又は中学校に通学していること、申請者が学齢期にある者である場合には、申請者が小学校又は中学 校に通学していることが求められ、これらを満たすかを考慮要素するとされています。

当職が今までご依頼いただいた方で、子どもを学校に通わせていない方はいなかったため、この要件は問題ないと思いますが、不登校になっている場合はもしかすると消極要素になるのかもしれません。
 

⑻法に規定する義務の遵守要件

在留外国人には様々な義務がありますが、特に注意が必要なのは、①住居地を変更した日から14日以内に市区町村窓口へ届出を行う義務と、②会社を退職・転職した際に入国管理局にオンライン・郵送・窓口のいずれかでおこなう契約期間に関する届出です。

①住居地を変更した日から14日以内に市区町村窓口へ届出を行う義務
市(区)役所在留カードに新住所を書き入れてもらう手続きですので、生活に必要なため忘れることはないと思いますが、変更した日から14日以内に届出が必要とされており、期限に遅れた場合5年間は永住許可申請時の消極要素とされるため注意が必要です。

②会社を退職・転職した際に入国管理局にオンライン・郵送・窓口のいずれかで行う契約期間に関する届出
会社を退職した日から14日以内、そして新会社に就職した日から14日以内にそれぞれ入国管理局に届出が必要です。
なお留学ビザから就職して技術人文知識国際業務ビザに変更申請した場合には、別途この届出は不要です。
技術人文知識国際業務ビザでA社に就職していて、A社を退職してB社に転職する場合は、その退職と転職についてそれぞれ届出が必要です。

詳しくは当所ホームページ永住許可申請に関わる【所属機関に関する届出】をご覧下さい。
 

⑼その他のその者の永住が国益に合するかの判断に資する事情要件

かなり幅広い定義であるのですが、具体例として
特定在留カード等の普及促進に向けた積極的な施策
②外国人による日本語や我が国の制度・ルール等の学習環境整備等への貢献・寄与
についても、その者の永住が日本 国の利益に合するかどうかを判断する考慮要素となります。

と記載されています。
特にマイナンバーカードと在留カードが合体した特定在留カードは簡単に取得できるものですので、これはまず行った方がよいでしょう。

 

◎本ガイドラインの適用時期

改定は令和9年4月1日以降の申請から適用します。
ただし年収要件は本ガイドラインの改定日から6か月前の日以降の申請であって、かつ、改定日において申請中である 案件にも適用します。 
とされています。改定予定日が令和8年10月1日とすれば、残念ながら年収要件だけは6か月前の令和8年4月1日申請分まで遡って適用しようとしているかと読み取れます。
 

◎総括

今回のガイドライン改定が極めて厳しい厳格化であることは間違いなく、通常の就労ビザ(技術人文知識国際業務ビザや経営管理ビザ、特定技能ビザ)外国人及びその家族は永住許可への道はほぼ閉ざされたとも言えます。

対して日本人(永住者)の配偶者と子に対しては今回の改定でも比較的永住許可の道は開かれています。
そしてやはり高度専門職ビザの優位性がより際立ったと言えると感じます。
高度専門職ビザは永住許可の道も比較的残されているうえに、在留期間無期限の高度専門職2号ビザへの変更の道もありますので、出来る方は高度専門職ビザへの変更をまず模索された方がよいと思います。


別の視点から今回の施策について気になる点は【収入要件】と【厚生年金水準要件】です。

【収入要件】については、
日本人世帯の平均収入を上回る水準の額に継続して達している、とした場合、地方と都会では賃金格差が年間100~200万円程度あるとされている為、永住許可を目指す外国人労働者は大都市圏に集中せざるを得なくなり、労働人口の枯渇が顕著な地方から労働者がいなくなる危険性があると考えられます。
これは東京一極集中を避け地方の過疎化を防ぎたい政府の方針とも反し、また各地方からは政府の方針によって外国人労働者を都会に集めているとして深い懸念が示されるのではないかと考えます。


【厚生年金水準要件】については、原則として上記収入水準で30年間厚生年金を収めた水準とする場合、
当該ガイドライン改定案にも記載のある、【我が国の発展に貢献することが期待できる高度外国人材を呼び込むためのインセンティブ】としての高度専門職ビザからの永住許可申請と矛盾しているのではという疑問点があります。
高度専門職ビザからの永住許可申請について、在留期間要件は従前のまま原則10年在留が必要なところ、在留期間1~3年で永住許可が取れますというファストパスとしての条件はそのままでありながら、30年間厚生年金を収めた水準で無ければ永住を認めないのであれば、結局高度人材外国人も30年就労しなければ永住許可が取れないとして、高度外国人材の獲得競争に深刻な影響があるでしょう。

人生において30~40歳代が「家を買って家庭を持ち、子供を育てて仕事にまい進する」という最も大切な時期ですが、その時期に会社倒産や病気事故などで失職した場合に、家族ともどもビザが切れて出国しなければならない危険性が顕在化する不安定な就労ビザのまま働かなければならない日本を、わざわざ高度人材外国人が選択する理由がなくなります。

もちろんその点についてガイドライン改定案にも「受給見込額が受給年金水準に達しない場合であっても、申請時点において、受給年金水準に不足する生活資金を補填可能な金融資産を有すると認められるときは、受給見込額が受給年金水準の額に達しているものと評価します。」
とは記載されていますが、あくまで但し書きであって、原則は30年間厚生年金加入が原則という書き方である為、そのような時の法務大臣の裁量でどちらともとれる不安定な基準では高度人材外国人からの信用は得られないでしょう。

ですから本ガイドライン改定案にすら記載されている「国際的な高度人材獲得競争における外国人材の獲得にも資する」という国家施策に矛盾する規定になっているのではないかと考えられます。


実務者の立場としてはこのような矛盾点・問題点について整合性が取れ、優秀な外国人材から敬遠されることのないガイドライン改定にしていただければと感じます。