一部の相続人に相続させない公正証書遺言書の作成
一部の相続人に相続させない公正証書遺言書の作成
2021/4/12
ジャンル
ご相談内容
再婚経験のあるご高齢の女性の方から、
現在の自分の財産は再婚後の家の財産である為、前婚で生まれた子へは相続させず、再婚後に生まれた子のみへ相続をさせたいというご相談を頂いた事例
解決方法、内容
⑴遺言の種類の検討
遺言には一般的に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。
「自筆証書遺言」は字の通り、遺言者が自筆で遺言を書くものです。パソコンで入力してプリントアウト出来ませんので面倒ですが、ただ書面に書くだけなので、行政書士等に文案の相談料を支払う程度ですから安価です。
「公正証書遺言」は公証人(退官した裁判官が就任されます)が遺言書を作成してくれますので、法的に間違いのない遺言書が出来、また遺言書も3通作成され、原本は公証役場で保管してもらえるので、紛失などの心配がなく安全確実な遺言方法といえます。その分、行政書士等への文案作成料のほかに、公証人費用も必要となりますので「自筆証書遺言」より7~10万円ほど費用が高くなります。

今回はご依頼者様の希望を実現する為に「公正証書遺言」の1択でした。
理由としては、「自筆証書遺言」は遺言者が亡くなられた時に、自筆証書遺言書を管轄の家庭裁判所に持って行き、検認という手続きをして開封しなければ無効になってしまうのですが、この検認手続きの際に、【相続人全員】が集合してなければなりません。
ご相談内容のとおり、今回は一部の相続人へ相続をさせない遺言書ですので、相続を受けられない相続人にも連絡をすると遺言者の希望通りの相続内容に出来ない危険性が高くなります(普通に考えて、本来自分も相続財産をもらえるはずなのに、自分はもらえないという遺言を残されていた場合、非常に気分が悪いですよね。)
ですが、「公正証書遺言」の場合は、既に公証人が内容と遺言者の意思を確認して遺言書を作成している為、遺言者の死亡時に検認が不要となりますので、相続を受けられない一部の相続人に連絡しなくてもよくなります。ですので今回は依頼者様のご希望を達成するためには「公正証書遺言」しかないということになりました。


⑵遺言書案と遺言執行者の検討
4人の子の内、2人の子に1/2ずつ相続させるという内容でしたが、2つ検討点がありました。
1つ目は遺言者より先に、相続予定の子が亡くなっていた場合です。
2つ目は、もし相続出来ない子がこの相続内容を知ってしまった場合です。

まず1つ目については、子が先に亡くなった場合、その子に子が生まれていた場合は、その子に相続させ、子が生まれていなかった場合には、遺言者がお世話になった団体に全額寄付するという内容となりました。
また相続において財産を売却して現金に換えたりする遺言執行者が必要ですが、子が存在している場合は、その子が、その子が先に死亡している場合は、別で遺言を執行してくれる人(団体)を指定しておかなければいけません。
今回のケースは遺言者に、信頼できる第3者がいないということでしたので、相続人となる子2人ともが先に亡くなっていた場合は、当職が遺言執行者となるという内容になりました。

2つ目は、遺言者がいくら「財産を相続させない」と言っても、本来相続できる予定だった分の1/2は【遺留分】として請求が可能です。これを「遺留分侵害額の請求(民法第1046条)」といいます。
これは請求された場合は止めることは出来ませんが、相続出来ない子に知られた場合、遺言者がなぜこのような遺言にしたのかを遺言書内にしたため、その子に自制を促すという方法があります。
これを【付言事項】といいます。
今回の場合は、「遺言者の現在有する財産は、再婚した亡き夫の家の財産で、亡夫も自分の実子にその財産を全て譲りたいと考えていました。遺言者としても亡夫の意思を尊重し、亡き夫の家の財産として亡き夫との間の子にすべて相続させたいと願っています」というような文面となりました。
この付言事項は法的な意味はありませんので、相続出来ない子が、それでも「遺留分侵害額の請求」をするということであれば、本来相続できる財産の1/2は請求出来てしまうのですが、少なくとも遺言者の意図を伝えることにより、遺留分侵害額の請求を回避できる可能性は少なからずあるかと思われます。


⑶公正証書遺言の調印
遺言者のご意向を文案にし、公証人と法的な摺り合わせをして文案が完成しましたら、日時をあわせて遺言者様とともに公証役場に調印の為出向きます。
なお、公正証書遺言の調印は、【遺言者】【公証人】【証人2名】の合計4名立会いの下行われます。
この証人は、遺言者の相続人やその配偶者などはなれません。ですので相続に関係のない第3者に2名お願いする必要がありますが、極めて個人的な内容である為、中々お願いできる相手はいないものです。

この場合、公証役場に依頼すれば1人8,000円で証人を紹介してもらうことが可能です。
※なお当所にご依頼の場合は、我々行政書士の田中と行政書士の廣瀬が証人に就任しますので、別途証人費用はかかりません。

公証人が遺言書内容を遺言者に確認しながら30分程度で調印手続きが終了し、公正証書遺言書完成となります。
内原本は公証役場に保管され、正本と謄本が遺言者に渡されることになります。


コロナ禍の中、万が一突然体調が急変したら、相続のことで子に迷惑をかけてしまうと心配だったけど、これで安心できますと大変喜んで頂けました。
遺言書の作成は作り始めると簡単な内容でも、色々と検討点が出てきます。
もし遺言書作成についてお考えでしたら、我々行政書士等にお気軽にご相談くださいませ。
参考費用
①当所の費用:約50,000~80,000円(税込み55,000~88,000円)

②公証人報酬:約70,000~90,000円
(相続総財産額や相続人数等により変動します。詳しくは日本公証人連合会ホームページをご確認ください)
日本公証人連合会ホームページ:
https://www.koshonin.gr.jp/business/b01/q12

総額①+②:125,000円~178,000円程度

※ご自身で手続きをされる場合で、証人を公証役場から紹介してもら場合は別途16,000円(証人1名8,000円×2名の場合)
お客様の情報
大阪府/女性

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